7時過ぎに目が覚めた。4時頃まで大部屋でOBが後輩に語っていたのを覚えているが、その人達も帰っていた。僅かに残った人達が後片付けをしている。手伝って撤収。朝の風が心地よい。少し肌寒いが。
 9時半。花瓶パフェを食べる計画など惹かれる話を振り切ってJR内野駅に向かった。弥彦村にあるルイ・イカールの美術館を訪れるため。それが今回の旅の2番目の目的。
 越後線経由で吉田駅着。弥彦への接続がものすごく悪いことを知った。11時少し前に着いたのに、弥彦駅行きが出るのが13時。約5Kmに2時間。歩くかタクシーでも使おう。駅舎を出るとバスの姿が。弥彦行きのバスぐらいあるだろうと踏んでバスに近づいた。そのバスは貸切無料送迎バスだった。そのバスの行き先掲示板には「競輪場行」と書いてある。ラッキー!目的地の「弥彦の丘美術館」の目の前が「弥彦けいりん」。そこ行きのバスに間違い無い。貴重な2時間を浮かし、無料で目的地すぐ傍まで行けるなんて!いそいそをバスに乗り込む。流石に競輪場行き。ギャンブル目当ての老人しかいない。ちょっと退廃した雰囲気を感じつつも、心は美術館に。バスは11時に発車した。5人のお客を乗せて。
 発車5分後、おかしなことに気が付く。弥彦けいりんのある海側に行くはずなのに、バスは内陸側にひたすら進んでいる。最初は大きく迂回するのだろうと思っていたのだが、その範囲を超えている。なまじ「無料送迎」のバスだけに、運転手に「降ろして下さい」とは言いづらい。なんで乗ってきたの?という視線に耐えた乗車だったからだ。私は競輪場に行くのよという振りをして対抗していた。
 「勝ったところで10万ぐらいだすけねぇ」「そうそう」老人達の柔らかい越後弁が車内に響く。ひたすら東に進むバス。ドナドナ。 すでに降ろしてもらってもタクシーを捕まえにくいところまで来ている。気分はささくれ。
 読み掛けの本のことを思い出した。「人は平素は自分がどこに向かっているか、人生がどんなものなのか理解できない」
このバスは人生みたいだな。どこに向かっているのか、正確に知ることが出来ないし、それを変える事もできない。運命に対し、ヒステリックに騒ぐか、甘んじて受け入れるか。さて、このPCはどうしよう。どうせ駅にいたところで2時間座っているだけだ。ならばこの状況を楽しもうではないか!これこそ本当の意味で目的地がわからないミステリーバスじゃないか!!(爆)
見方を、意識を変えることによって世界観が変わる。それはPCにとって世界が変わるに等しい。ともかく、この状況を、この旅を、このバスの道中を楽しむことにした。
 バスは東に進む。東ということは弥彦線を逆方向に進む形。燕市に入った。私は思い出した。この方向にもう1つ公営ギャンブル場があることを。そして、バスの行き先掲示板の裏にペンで乱暴に「けいばじょう」と書いてあることに気が付いた。この掲示板の存在理由が判った。外に向けてではなく、中のお客に向けて書かれていたのだ。なんというトリック‥‥。バスは11:25、第一レースが始まる直前に目的地に着いた。「三条競馬場」に。
 降りざるを得ない。降りたからには競馬場に入らざるを得ない。こうして私は産まれて初めてレース開催時の競馬場に入場した。地方競馬なので対して人がいないと思いきや次々人がやってくる。老若男女関係無く。それが意外だった。きちんとギャンブルしに来ている人達。
 入って早速第一レース。カメラ片手に観戦。終了後、次レースの馬群を観察。こうやって馬を見るのも初めて。周りの馬に比べると小ぶりだが、素直で実直そうな性格の4番の馬が気になった。が、馬券を買ったことがないので買わず、変わりにビールと串焼きを買った。第二レース、12時出走。驚いたことに4番の馬が勝った。買っていないが嬉しかった。
 このまま競馬を見るのも楽しいが当初の目的が果たせない。去ることにした。競馬場から東三条駅までのバスに乗車。東三条駅で弥彦線に乗車。相席の老人達は昔、弥彦村に住んでいた人達らしい。同窓会もどきかしらん。弥彦駅に着いたのは13:47。
 歩いて「弥彦の丘美術館」に向かう。途中の「秀作展」という看板が気になる。そのなもの無いはずなのに。着いて判った。私が来たかったルイ・イカール常設展示館としての美術館はそこには無かった。新潟県美術家連盟の作品を展示する場所に変わっていた。余りのことに声もでない。後輩にイカールの美術館に行くと啖呵切った私の立場は? 取りあえず中に入った。13名の作家の作品が展示されていた。その中で猪爪彦一氏の作品が目に止まった。ファンタジックな、でもどことなく寂しい絵。これを見ることが出来たので良いことにしよう。城山森林公園の林道を下りながら写真を撮った。撮影魂が復活してきたのを感じる。些細な、いとおしいものや光景を撮る。リハビリしながら駅に向かった。
 どうやらイカール作品は「ロマンの泉美術館」に移ったようだ。行くか行かないかを駅に着くまでに決めないと‥‥。と目に入る「やひこの湯」という小さな看板。そういえば、温泉があった。弥彦は弥彦神社も含めてかなりの観光地。私はその傍流を歩いているだけだった。‥‥せっかくだから、風呂でも入ろうか?足は観光のメインストリームに。フィルムを消費しながら‥‥気が付くと弥彦神社をお参りしている自分。さっきまで全く寄るつもりなかったのに。巫女さんに惹かれて社務所に近づく。お守り売りの巫女さん〜(爆)。でもカウンターを押して来場者をカウントしている姿にすさまじきものを感じて退散。うーむ。
 日帰り入浴させてくれる「冥加屋」さんを発見。狸の置物に惹かれた(汗)。タオルとバスタオルをレンタルで700円は安い。浴場は3階に。浴場にも狸の置物が。15時過ぎという時間もあって、完全に貸切状態。堪能〜。湯上がり後お茶を頂いて退出。今度は宿泊で利用したいもの。
 ロマンの泉美術館行きは断念。駅までの道すがら、諏訪神社の大木を撮影していると、見たことのある一団。列車で相席していた人達。「昔はよく登ったっけねぇ」と木を見上げて話をしていた。彼らが子どもの時にも巨木は在り、彼らが亡くなった後もこの巨木は在りつづけるのだろう。
 駅が見えた。若い女性駅長さんが外に出て待っている姿からする約束待っている姿からもうすぐ発車することが検討ついた。小走り。お陰で間に合った。
 内野駅下車。「鶴の友純米」を買うために酒屋に向かうとクラクションの音。写真部OBの*さん。なんて偶然。部室まで送ってもらうことに。部室にいた部員に挨拶して退出。
 越後線に乗り、白山駅で降車。フィルムを消費しながら西堀通りに。喫茶店「シュガーコート」が3つ目の目的地。新潟で数少ない馴染みの店。カウンターに座り、店主とおしゃべりしながらアッサムのミルクティーとダージリンのファーストフラッシュを楽しむ。一時間半ほど話し込んでしまった。イエスハウスの事を後でお知らせする約束。お土産にファーストフラッシュを二包み頂いて退席。
 古町に出て、「白寿」でうま煮ラーメンを食す。久々だなぁ。初々しいカップルの会話が微笑ましかった。書店「北光社」に寄る。バスに乗って新潟駅に。万代橋が懐かしかった。最終の新幹線で帰宅。

コメント

最新の日記 一覧

<<  2025年6月  >>
1234567
891011121314
15161718192021
22232425262728
293012345

お気に入り日記の更新

最新のコメント

この日記について

日記内を検索