いぬもあるけば・・・「あの電話の背景」
2001年10月3日家族の話をここに書くのは露出のし過ぎな気がする。もしかしたら、今日の日記は後日差し替えるかもしれない。
明日の出張の準備をしていると、携帯が鳴った。父からだった。この間の続きかとちょっとブルーになったのだが、電話の向こうは妙に気分が良さそうだった。実は以前、やはり父から電話があり、母の調子が悪いという話を聞いていた。場合によったら・・・もし何かあったら帰省できるか?と通告されていた。
母は持病を持っている。若いときの無理からきたリウマチ熱が元で、私が幼い頃に発病した。病名は「心臓弁膜症 僧坊弁閉鎖不全」。動脈に血を送り出す弁が機能不全を起こしてきちんと閉まらず、逆流してしまう病気だ。この病気のお陰で母は運転免許を取得できない。車社会の群馬県ではそれは足がないに等しい。昔、倒れて救急車に運ばれたこともあるが、最近はとても調子が良い。それもあって、母の調子が悪いというのは心臓肥大などの症状がぶり返したのか、はたまた更年期障害が悪化したのかどちらかだと思っていた。
だが、心配されていたのは違うものだった。「先日あった背中のしこりがなくなってね。いや、良かった・・・」 背中のしこり?なじみの家庭医のところにお腹の調子を見てもらったのだが、後日再診するかも・・・という話は聞いていた。長くお世話になっている老家庭医は漢方や氣にも造詣があるちょっと不思議なお医者さんなのだが、母の心臓の事も知っている。それを踏まえての再診なのだと思っていた。
電話の向こうでは安堵の余り喜んでいる父母。そしてようやく判った。容体云々は心臓ではなく、「癌」の疑いだったことを。父は慣れていないこともあって、伝えるべき事を伝えきれていなかった。母は自分が病気持ちであることもあって、病気に関する知識をかなり持っている。「お腹が原因で背中にしこりがあるようなので再診」という父からの説明から、何が疑われているかを察してしまった。その母が真相が判らないなりに、子供たちの顔が見たいので帰省してくれないかという無言の願いを伝えようとしたのが、あの電話の背景・真相だった。
事実が分かって、私は大ダメージを受け、息苦しさを感じ、足が竦んだ。「騒ぎ」のレベルで済んだからよかったものの・・・
「そういうのを察して、顔を見せるとかできないところが男の子だよねぇ。女の子だったら、何も言わなくても取りあえず帰って顔を見せるだろうに・・・」そういう母の言葉に何も返すことができなかった。
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