有休を取って、帰省。前橋駅に降り立つ。平日昼間。改めてここが県庁所在地なのかしらんと思ってしまう。ここまで閑散としていると逆にそれが趣になる。日本でなく、ヨーロッパの1地方都市だと考えれば悪くない。妄想回路を起動して、数キロ離れた私鉄の駅まで歩いてみた。人通りのない繁華街には「国民文化祭」の幕が横断していた。車社会が発達してしまい過ぎて、利便性の良い大規模駐車場を持たない繁華街は急速に寂れてしまった。出身者としてはなんとも寂しいことだが、旅行者としての視点を設定すればそれさえも趣に変わってしまう。上毛電鉄の中央前橋駅の変貌に驚いた。まさかガラス張りとは・・・。その明るさに開き直り的なものを感じた。その意気や良し。
 車窓から風景が視点が旅行者モードになっているためか新鮮に映る。朔太郎が読んだ広瀬川。決して大きくもない、見栄えもそんなに良いとは思えなかった川も水面を煌かせる秋の日差しの魔力のお陰でとても魅力的に映る。ああ、女性的な川なのだなと思う。それ以外にも惹かれる光景に気付かされた。
 県立心臓血管センター駅に降り立つ。周囲は子供の頃遊んだ場所。しばし見渡した後に、直接、県立心臓血管センター[リンク]に向かい、父の入院している部屋に。父は4人部屋の入り口側のベッドで横になっていた。元気そうで安心。体力的にも問題なさそうだ。手術の時間が押していて、しばらく待たなければならない事を知る。
 病室から秋の日差しに照らされた赤城山の素晴らしい姿が見える。これほど見事な光景は故郷を離れて以来、見られなかったものだ。父や母や他の患者さんと話をしている間もしばしばその光景に見とれていた。
 病室には他にも3名の患者さんが入院していた。症状としては父よりも悪く、冠動脈のバイパス手術など大きな手術を受けた人も居る。が、皆さん陽気なのに軽い驚きを感じた。以前見舞った内科系の病室では部屋の雰囲気はもっと湿った感じだった。それがなかった。それよりも皆、明日のことを話題にしていた。なんでも、明日、皇太子が病院併設のリハビリ施設を視察に訪れられるらしい。最初、冗談だと思っていたがどうやら本当らしい。国民文化祭の開会式に出席するついでに寄られるという話。うーむ。
 16時近くになってようやく手術のための着替えなど準備が始まった。そして父はICUに運ばれていった。母と私はICU入り口近くの待合所で待つ事にした。事前に説明のあった「経皮的冠動脈形成術とステント留置」。詰まりかけている冠動脈をバルーンカテーテルで広げ、さらに金属管をかませることで太さを固定するという手術。崩れたトンネルの補修工事のようなもの。おそらく2時間以上掛かるのではと思っていた。一昨日の検査が1時間ぐらい掛かったというので。
 雑誌を読みながら待っていると、病室側の待合室にいた伯母が「あれ、まだここにいたの?もう、病室に戻ってるよ」と驚いた感じで報せてくれた。なぜ?まだ1時間しか経っていないのに? 半信半疑のまま病室に、とはいっても先ほどの4人部屋ではなく個室に。確かに父がいた。部分麻酔で手術を行ったため、私達を軽い笑顔で迎えた。待ちぼうけを食っていた私は変な気分に。
 その後、担当医の伊藤先生が手術経過の説明と止血作業に訪れた。術中、多少不整脈が観察されたため、様子見のためにしばらく点滴を続けるという。早ければ明後日にも退院という話だったがそういう訳にはいかなそうだ。先生は小柄で知性的な女性。心臓外科手術は時に何時間も掛かるハードな作業だ。父に対する止血作業も30分以上大腿部の動脈を圧迫し続けるハードなもの。感嘆した。
 作業は終わったが完全に止血できたわけではない。術後6時間、安静にしなければならない。18時に手術が終わったのだから24時まで足を動かせない。眠ると動いてしまうので眠るわけにもいかない。そこで母と私は24時まで付き添った。
 帰宅時、駐車場にはパトカーの姿が、明日のための警備だ。おそらく交代でずっと警備しつづけるのだろう。うちの車以外1台も止まっていない駐車場を後にした。

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