いぬもあるけば・・・「消え行く原稿」
2002年2月7日 1時間遅れでゼミに出席。だが先生も遅れての到着らしく、聞き損ねた情報はそう多くはなかったようだ。途中まで話されていたのは五島美術館の乾山展の図録について。全国でも珍しいカタロギングが為された図録。ゼミ資料として、そのカタロギングした作品一覧のコピーと何かの原稿のコピーだった。
図録は作成するのが大変だったため、完成は〆切を大幅に遅れてのものだったらしい。遅れそうなことが判ったときに、作業を切り上げて間に合わせるか、初志を貫徹するか迷ったが、前任者が「展示会なんて期間が過ぎたら消えて無くなってしまう。残るのは図録だけだよ」の言葉を思い出して、予定通りのものに仕上げたらしい。
もう1つの資料は陶器大事典という本の為に書いた「茶碗」という言葉を茶の湯の歴史の流れから書き記した原稿。コピー9枚ほどあるのだが編集者はこれを3枚に納めてほしいと言ったという。1/3になってどれだけの事が言えるのか。私たちが見ている資料はそういう事情で没原稿であり、消え行く原稿であった。
こう書き連ねているだけで、先生の反骨さが垣間見られる。先ほどの図録に関して述べた話には更にそれを感じた。
図録に先生本人の論文のあるのだが、それはある種の隠れ蓑であるらしい。後ろに論文の英文のアブストラクトが載せてあるのだが、こちらに言いたいことを断定調で書いているらしい。日本語ではとても断定調で書けないヤバイ事をさらっと英文で書いている。英文を読まない大騒ぎしそうな日本人は気づかないが、メトロポリタン美術館などの外国の学芸員には伝わる。医者が患者に診察内容を読みとれないようにドイツ語でカルテを書いているように。一種の暗号のような・・・
この様な仕掛けが別の所でも見られた。TVKの音楽番組でちらりと眼にした女性バンドの歌。彼女たちは全員日本人なのだが、ヴォーカルは英語の歌詞を歌っていた。何故か。私は『その歌詞が危険だから』英語で歌ったのだと思う。日本語で歌うとその内容に対し反感を持った大人から攻撃されてしまうだろう。私もヒアリングは駄目なので、もし和訳がテロップに出なければ意味を理解しないで聞き流していたに違いない。
彼女は歌う。「バブルの時代に散々享楽の時を過ごしたあなた達。でも、私達にはその残骸しかない。こんな状況にしたあなた達の借りをなぜ背負わなければならないのか。」といった内容。
バブルの狂乱を話しでしかしらない20代以下の者達は氷河期という言葉さえ使い古されてしまった就職難に悩み、老人保険料や莫大な国債という借金の連帯保証人に無理矢理させられ、将来に積極的な希望を抱けない。そんな彼らがバブルの果実を味わいつくした30代、40代、50代・・・の世代に対してどんな感情を抱くだろう。彼らの無気力、無感動の背景には怒りと恨みがある。被告はこの暗喩とそれが指し示す暗い世代間断絶をどれだけ理解しているだろうか。
こんな恨み言は日本という「健全な国」では日本語で歌えない。
図録は作成するのが大変だったため、完成は〆切を大幅に遅れてのものだったらしい。遅れそうなことが判ったときに、作業を切り上げて間に合わせるか、初志を貫徹するか迷ったが、前任者が「展示会なんて期間が過ぎたら消えて無くなってしまう。残るのは図録だけだよ」の言葉を思い出して、予定通りのものに仕上げたらしい。
もう1つの資料は陶器大事典という本の為に書いた「茶碗」という言葉を茶の湯の歴史の流れから書き記した原稿。コピー9枚ほどあるのだが編集者はこれを3枚に納めてほしいと言ったという。1/3になってどれだけの事が言えるのか。私たちが見ている資料はそういう事情で没原稿であり、消え行く原稿であった。
こう書き連ねているだけで、先生の反骨さが垣間見られる。先ほどの図録に関して述べた話には更にそれを感じた。
図録に先生本人の論文のあるのだが、それはある種の隠れ蓑であるらしい。後ろに論文の英文のアブストラクトが載せてあるのだが、こちらに言いたいことを断定調で書いているらしい。日本語ではとても断定調で書けないヤバイ事をさらっと英文で書いている。英文を読まない大騒ぎしそうな日本人は気づかないが、メトロポリタン美術館などの外国の学芸員には伝わる。医者が患者に診察内容を読みとれないようにドイツ語でカルテを書いているように。一種の暗号のような・・・
この様な仕掛けが別の所でも見られた。TVKの音楽番組でちらりと眼にした女性バンドの歌。彼女たちは全員日本人なのだが、ヴォーカルは英語の歌詞を歌っていた。何故か。私は『その歌詞が危険だから』英語で歌ったのだと思う。日本語で歌うとその内容に対し反感を持った大人から攻撃されてしまうだろう。私もヒアリングは駄目なので、もし和訳がテロップに出なければ意味を理解しないで聞き流していたに違いない。
彼女は歌う。「バブルの時代に散々享楽の時を過ごしたあなた達。でも、私達にはその残骸しかない。こんな状況にしたあなた達の借りをなぜ背負わなければならないのか。」といった内容。
バブルの狂乱を話しでしかしらない20代以下の者達は氷河期という言葉さえ使い古されてしまった就職難に悩み、老人保険料や莫大な国債という借金の連帯保証人に無理矢理させられ、将来に積極的な希望を抱けない。そんな彼らがバブルの果実を味わいつくした30代、40代、50代・・・の世代に対してどんな感情を抱くだろう。彼らの無気力、無感動の背景には怒りと恨みがある。被告はこの暗喩とそれが指し示す暗い世代間断絶をどれだけ理解しているだろうか。
こんな恨み言は日本という「健全な国」では日本語で歌えない。
コメント