克弘さんと合流し、「さて、どこに行きますか?」 元々行きたいところはあったのだが、自分が運転するならともかく、遠くて厳しい道は疲れさせてしまうので気が引けた。それと、ちょっと気になるイベントがある。そういう訳で吉川町に。目的のイベントは「第5回越後よしかわ酒まつり」。吉川は越後杜氏を多数輩出しており、地元の吉川高校には醸造科が存在するほど。日本酒呑みが気にならないはずがない。
 吉川町への道筋の田圃の畦に大豆の苗が植えられているのを見た。農業指導で植えられているのではなく昔からあるらしい。空いている土地の有効利用にしては効率が悪すぎるし、稲作作業には邪魔になる。もしかしたら、根瘤菌利用かしらん。豆科の植物の根には根瘤という瘤が出来、そこに繁殖する菌が空気中の窒素から窒素化合物を生成する。窒素は「窒素・リン酸・カリ」と言われる基本的な肥料の1つ。よく連作障害を避けるために大豆を植えるという話を聞くし、休耕地にレンゲ草を生えさせておくのもこれが理由だったはず。(尤も20年以上前に読んだ『複合汚染』という本からのうろ覚えの受け売り知識) てっきりそういう知識を持つ農業指導員によるものかと思ったのだが、そうではないとなると生活の知恵レベルで植えられてきたようだ。なんか、凄い。
 
 酒まつりの主会場は「よしかわ杜氏の郷」という観光施設。ここは醸造所も兼ねていて、只の醸造過程見学施設でなく、実際にお酒を作っていた。試飲した酒は戦略的な酒。
 これぐらいならば、まぁよくある企画。村おこしとしては割とよく見られる。しかし‥‥「全国200銘酒きき酒会」という企画は‥‥県内をはじめ、全国各地から集まった人気銘酒200種をきき酒できる。入場無料で。猪口1杯ずつとはいえ200杯も呑んだらどうなるだろう。実際には呑み放題なのだ。
 酒の配置は各国税局によって分かれている。銘柄と蔵元名だけでなく酒質、原料米、日本酒度なども明示されていて、原料米から好みの酒を探る事も可能。原料米の情報は面白かった。
 「しゃわわせ〜」な企画だが、飲めない克弘さんの事を考えると酔っ払う訳には行かない。次第に本当のきき酒のように口に含むだけに。流石に天領盃や酔鯨や北雪などは飲んでしまうが。2合未満に押さえたつもり。吉川‥‥いい町だなぁ(現金な)。
 次に鵜の浜温泉に。「人魚館」という公共施設。休日で大勢の人出。落ち着くならば旅館の温泉に入れてもらった方がよかったか‥‥(汗)。そんな後悔も遅い。とりあえず、大浴場に。大きな湯船に多数、浮かぶものが。なんだろ‥‥リンゴだった。100個以上のそれがジェットバスによって出来る水流にそって湯船の中を回遊。泉質は海の傍であることもあり、しょっぱいナトリウム泉。そのお湯に浸かっているリンゴ。齧ったら、甘しょっぱくて美味しい?高崎山のサルのような発想。
 休憩所で合流した克弘さんによると、あちらもリンゴ風呂だったらしい。出る時に出入り口の農作物直販所を冷かす。茄子がお目当て。茄子も地方によって色々ある。と、克弘さんが反応している。どうやら、「ヒラタケ」という茸に反応しているようだ。「取りにいって見つからなかったものがここで売っている〜」と。この茸は食べた事がないので、茄子と一緒に購入。茸は風味が落ちるから今日中にお味噌汁にしたほうがいいと。それで思い出した。一昨日作っておいたキャベツの味噌汁。どうなっているだろう。すでに混沌に‥‥。頭を振って、思い浮かんだ光景を振り払った(汗)。
 
 朝からまともな食事をしていない。克弘さんが気になっている店に行くことに。新規開拓。長岡近隣の美味しい店紹介本に載っているトリュフ料理の店。何故にトリュフ。怪しい。これは‥‥是非行って確認せねば(爆)。車は方向転換して越路町に向かった。
 しばらくすると、左手の山に怪しい建物が。小山全体に朱色に輝く大鳥居や社が見える。一体‥‥。「宝徳稲荷大社」。お稲荷さんの社にしては異様に大きい。後で調べて判ったのだが、お稲荷さんではないらしい。「きつねさんではなく、稲が成る、護国豊穣の 力が生まれることを語源としている。歴史をひもとくと,遠く縄文の昔までさかのぼる.古い記録をたどると,殷帝大王(いててのひみこ)の命により物部美万玉女尊(もののべのみのわひめのみこと)が,瓊名(ぬな)の里に日の宮のみやしろを建てた時からといわれている。」
 新潟にこんな社があったとは‥‥
 地図を見ると、目的のレストラン「セレス」は越後岩塚駅と宝徳稲荷の間にある。宝徳稲荷の前は通らないだろう。が、それは間違いだった。こ線橋を渡って道なりに行くと‥‥右手に社が。あぅ!朱色に塗られた建物が目に痛い。看板は道を更に登れと指示する。それって、宝徳稲荷のエリアに入るということでは。二人とも一瞬戻ることを考えたが、ここまで来たからには。多数の蝋燭の炎が揺らめく光景を脇に見やりながら、車は山道を登って行った。
 開けた場所。右に見える朱色の物は、フィルタリングで認識外にしておいてと(汗)。(ここまで、怪しがるのは、由来とか全然知らなかったから。そして余りに規模の大きい施設だったから。)目の前に看板が。「セレス‥‥農学?」ここに至って更に怪しさ二乗!というか、「もう何でも来い」状態。レストランはその隣にあり、建物自体はまだ新しく、こじんまりとしていた。
 中に入ると、照明は明るく清潔感がある。今迄の怪しさを払拭させてくれる。対応するウェイトレスのきちんとした立ち振る舞いにほっとした。夕食には早過ぎる時間だからだろうか、私達以外にお客は誰もいなかった。大窓の傍のテーブルに座る。メニューを見ると、確かにトリュフを使ったメニューが。トリュフカレーって‥‥800円は試す気になる値段。「でも、折角来たのだからコースにしたい。しかしハズす可能性も高いからそうそう値段の高いのもリスクがある」という思考の結果、一番安い3K円のコースを頼んだ。単品メニューに「アガリスクのスープ」があった。「健康」を奉る雑誌によく載っているキノコであることは知っている。でも実際に食したことはない。というか、こういう風に(クロレラや高麗人参をお味噌汁の具にするような)食材として摂取するというイメージがなかった。そこで単品で頼もうとしたところ、コースのスープと交換してくれるという。その分、値段を上乗せするのだろう。でも飲んでみたかったのでお願いした。
 注文を終えて、おしゃべりしたり、窓から見える景色を‥‥「何か」が見える(汗)。緑が支配する光景に飛び込む「何か」。山の上に更に奥社があるのか登って行く車が見える。「ここは‥‥テリトリー内なんだ。」二人とも額に浮ぶ縦スジを振り払うように会話を弾ませる。
 前菜が出てきた。美味しい。これだけで、素晴らしい選択をした事を確信。アガリスクのスープは甘みと旨みを感じる。薬膳的なエグミや苦みもなく、普通に美味しい。1本丸々入っているアガリスク本体は適度な歯ごたえがあって、それも楽しい。トリュフを塗したパスタ。味が濃いのでワインによく合う。メインはひれ肉のステーキ。柔らかい。
 はっきり言って驚いた。連れてきてくれた克弘さんには悪いが、来るまでは完全にネタとしての店として認識していて、内装や味などある意味どうでもいいやという気持ちだった。観光地によくある悪趣味な内装、ファミレスか喫茶店レベルの接客。そんな予想が見事に覆された。こんな山奥にこんな店が営業されているとは。綺麗な内装、レベルの高い接客、驚きのある料理。どれもこの値段で楽しめるものではない。終始丁寧な接客は街中の老舗レストラン並みでは。これで3K円ならば、シェフおまかせの7K円のコースは一体どんなものが楽しめるのかしらん。よい店を見つけた。
 それにしても、どう考えても「趣味の店」にしか見えない。ウェイトレスさんに尋ねてみた。オーナーは隣のセレス農学の人。日本人には馴染みがないトリュフをもっと身近に感じて欲しいと開店。アンテナショップとしてのレストランであるために、価格もかなり押さえているのだ。納得。
 デザートを頂き、コーヒーを飲む。既に日は落ちて、外は暗く、山の中故に「何も」見えない。老夫婦が一組テーブルに、地元の人らしい男性二人がカウンターに。満ち足りた気分で席を立つ。さて、会計は?‥‥追加なしの料金だった。スープ差し替えも関係なく。確か乾燥した商品を店頭販売していたが、100gあたり数千円だったはず。やはり自分の所で作っているというのは強いなぁ。自社内ではマイタケやシイタケと同じような扱いなのだろう。
 
 近いうちにまた訪れたい。よい接客態度、満足させる味、店の雰囲気などの「品質」は維持するのが難しい。何かの拍子に、大勢の客が詰め掛ける店になったときにもこの品質が維持できるかは疑わしい。あの札幌の店と同様に。それが維持されている間に。克弘さん、連れていってください(爆)。
 長岡駅まで送ってもらい、克弘さんとお別れ。無事に帰宅。
 
 今日の内にヒラタケを料理しないと。味噌汁にするのがいいんだよなぁ。コンロに置いてある片平鍋を見る。そういえば、昨日の朝に作ったキャベツの味噌汁がまだ残っていたはず‥‥
 
 「!!!!」
 
                   (舞台、暗転)


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