先日(2/6)のセミナー「生と死の心理的援助〜死を前にした人々と遺された人々へ〜」の講義ノートの続き

●遺族の看護カウンセリング 遺族のためのサポートグループから

*グリーフケアとは

 「悲嘆(grief)」:愛する対象を失った悲しみ、喪失に伴って生じる一連の反応
 
 「悲嘆作業(grief work)」
   :喪失により、悲しみや怒り、罪責感と自責、不安、孤独感、疲労感、無力感などが生じるが、
    そのような悲嘆状況か喪失の事実を認め、様々な感情を解放し、心理的に回復していく内的過程。
 
 「悲嘆過程(grief process)」
   ・ E.キューブラーロスの5段階(1971)
      1)否認 2)怒り 3)取引 4)抑鬱 5)受容
 
   ・ C.M.パークスの4つの位相(1970)
      1)感覚麻痺 2)思慕と抗議 3)混乱と抑鬱 4)回復
 
   ・ J.W.ウォーデンの4つの課題(1991)
      1)喪失の事実を受容する 2)悲嘆の苦痛を乗り越える
      3)死者のいない環境に適応する 4)死者を情緒的に再配置し、生活を続ける
 
   ・ N.レイニック&M.ダビッドソン=ニールセンの4つの課題(1991)
      1)喪失を認める 2)悲嘆の様々な感情を解放する
      3)新しい能力を身につける 4)感情のエネルギーを再投入する
 
 「悲嘆ケア(grief care)」
    グリーフワークが正常に行われない ⇒ 病的悲嘆になる
 
   病的悲嘆を予防し、悲嘆作業が正常に進むようにサポートすること。
    アプローチ例 個人カウンセリング、サポートグループ
 
   >先生のところでは「遺族のためのサポートグループ」という場を設定し、支援している。
      > 参加を強要しない。手紙による見学のお勧め。
      > 月に2回、1〜2Hの集まり。立場や受容度の異なる遺族が集まって語り合う。
        終わったら、軽いお茶会。 < 語るにも強要しない。
      > 主役は遺族。看護師はサポート。 < セルフヘルプグループ的
 
 
 ◆ 泣くこと
    セルフヘルプ的なメンバー受容度の高い場で
   「悲しいとき、寂しいときは思いっきり泣けばよいのだと思った」
   「涙を流すとき、真実の自分をさらけ出すことができる」
   「泣けなかったら心の中も渇いたままだったろう」
   「泣くことで強くなれる」
   「ここに来て、泣けることで前向きになれるような気がする」
 
 
 ★ポイント: 悲しむこと、泣くことを認める
    ・家族も遺族も「泣くことは自分の弱さを意味することだ」と思っている。
    ・「悲しんだり泣いたりすると、その状況に負けてしまう」と思い込んでいる。
    ・忙しくすることで悲しみを感じないようにしたり、泣くことを否定する。
 
              ↓
 
        抑えられた悲しみは消えていくものではない。
        逆に身体の中にどんどん溜まっていく。
 
 
  ◎泣くことは 悲しみを流すこと
    ・遺族に泣いてもよいと保証する。
    ・泣くことができる場と時間を用意する。
 
 
 ◆ 語ること
   「話をすることで気持ちが楽になる」
   「自分をふり返ることができた」
   「心残りなことが整理できたような気がする」
   「切ない思いを胸に抱え込んでいては、いつまでも本当に立ち直ることはできないことがわかった」
   「素直に話せるようになり、少しずつ寂しさだけの気持ちから抜けられるような感じ」
   
   『聴いてくれる人たちの存在の重要性』
    「同じ悲しみを抱えた人たちと本音で話し合え、同じ気持ちで聴いてもらえて嬉しい」
   
   『聴くことの重要性』
    「話を聴き、話すことで、心の中が少しずつ明るくなる気がする」
    「話を聴くだけでも元気が出てきた気がする」
   
 ★ポイント: 安心して様々な感情や思いを語ることができるように支援する
    ・家族を亡くした悲しみを他者に話すことができない。
    ・配偶者を亡くした場合、子供にさえ悲しみを語ることができず、孤立している。
    
    ・カウンセラー側:その話が事実かどうかにこだわるより、その人にとっての真実を尊重し、話を否定せず、聴く姿勢を大切にする。
    
    ・人は怒りや恨みなどネガティブな感情をもってはいけないと思いがちである。
 
              ↓
 
       どんな感情も大切な感情であることを伝える。
 
              ↓
 
     遺族は安心してネガティブな感情を繰り返し語り続けることで、自分で解決の道を見つけていく。
 
 
 ◆ 怒りの表出
 
   (自らの中にある)怒りに一人で向き合うことは怖い
 
              ↓
 
   グループだからこそ安心して怒りを出すことができる
 
              ↓
 
       現実を受け止められるようになる
 
 ★ポイント: 怒りから逃げずに受けとめる
    ・語る中で、怒りの表出は悲嘆から回復していくために大切な感情表出である。
    ・医療(者)への怒り、故人への怒り、運命への怒り etc.
    ・カウンセラー側:怒りを感じていることに共感する。
    ・カウンセラー側:一番大切なことは相手の怒りから逃げないことである。
 
 
 ◆思い出の品を持ってきて語ること
   < 死別2ヶ月後から始めて5ヶ月ぐらいの間に (参加5〜6回ほどから)
 
    ・故人について話すのではなく、故人に対して話しかけることを可能にする。
    ・その品がもつ象徴的意味が明らかとなる。
    ・故人との新たな関係に出会うことを促進する。
 
              ↓
 
      自分の中で故人の場所が新たに定まってくる。
 
              ↓
 
     人生を先に進めたり、新しい人間関係や生活を築いていくことに繋がっていく。
 
 
 ◆手紙を書いてきて読むこと
   < 一周忌という一つの区切りを向かえてから

    「ある段階で手紙を読むと、ああ本当に亡くなったんだなっていう気がする。
     なんかひとつ卒業したっていう、これは一つのイニシエーション。」
    「けじめになるみたいね。」
    「自分の心の仲に納得させる意味があるんでしょうね。」

  ★ 手紙 
     故人の死に直面し、現在の心情を整理・確認し、気持ちを収めることになる。
         ⇒イニシエーション

      受け取ったものに対しては「ありがとう」
       失ったものに対しては「さようなら」
 
              ↓
 
      これから自分らしく生きていくことを故人に約束
 
 
 
 ◆悲嘆からの回復とは
  
  『歴史の連続性の実感』
    過去の故人との関係の歴史が今の自分の歴史として、
    今の自分を支えるものとして残っている、息づいている。
 
              ↓
 
  『関係の連続性の実感』
    故人との関係の質は変わったが、今も自分の中に、
    見守ってくれているという関係に変化して息づいている。
 
              ↓
 
  『時間の連続性の回復』
    亡くなったときは過去に向かっていた思いが見守ってくれていると
    思えるようになったことで今を生きられるようになり、これからの
    自分の行き方や未来に向かえるようになる。

   ・サポートグループの中で、安心して様々な感情を解放していくことで、
    自分にとっての故人の新しい位置に気づき、悲しみや悔いを持ちながらも
    生きていくことができる力を取り戻していく。

  *悲しみや悔いは消えるものではない。
   それを抱えながら生きていくことを支える。
 
 
 
 サポートグループを卒業するときに読んでもらっている
  ⇒絵本 『いつでもあえる』 菊田 まりこ (著) 学習研究社 (刊)
http://www.amazon.co.jp/%E3%81%84%E3%81%A4%E3%81%A7%E3%82%82%E4%BC%9A%E3%81%88%E3%82%8B-%E8%8F%8A%E7%94%B0-%E3%81%BE%E3%82%8A%E3%81%93/dp/4052010558/ref=sr_1_1/250-5446814-1617867?ie=UTF8&s=books&qid=1173684544&sr=1-1

看護カウンセリング 広瀬 寛子 (著)  医学書院 (刊)
http://www.amazon.co.jp/%E7%9C%8B%E8%AD%B7%E3%82%AB%E3%82%A6%E3%83%B3%E3%82%BB%E3%83%AA%E3%83%B3%E3%82%B0-%E5%BA%83%E7%80%AC-%E5%AF%9B%E5%AD%90/dp/4260332570/ref=sr_1_17/250-5446814-1617867?ie=UTF8&s=books&qid=1173689386&sr=1-17

(了)

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